魚米商店の店先。旧水戸街道・西小菅商盛会

小菅の魚屋さん
魚米(うおよね)商店

小菅は魅力的な地域です。古い建物が残っていたり、何気ない所で文化財を発見したり、路地を歩いているだけで楽しいところです。特に一丁目は立地が独特で、綾瀬川と荒川に挟まれ3方に首都高速道路が走っていて、路上に立ってぐるりと見渡すと不思議な感じがしました。両側に川を眺めながらの散歩はこれからの季節にお勧めです。

そして、今回は小菅に来たら是非立ち寄っていただきたい店を紹介します。その店は旧水戸街道水戸橋どおりの西小菅商盛会にある「魚米商店」です。ほとんどの店がシャッターを下ろした商店街で、一軒だけ開いている魚屋さんがあると聞いて興味がわき出かけました。

行ってみると確かに商店街は人通りも少なく、開いている店は無いように見えます。周りは静かなのに、魚屋さんの所にだけ人が集まって来ていたのですぐにわかりました。

魚米商店の店頭

● どうしてココに
魚屋さん?

魚米商店・岩瀬さんに聞きました。

「少し前までは賑やかな商店街だったのよ。肉屋さん、八百屋さん、花屋さん、洋品店、本屋さん、薬局も、牛乳屋もあって、綾瀬や堀切よりも栄えていたよ」と、にこやかに話されます。

たった一軒になっても続けるのには、どんなにか苦労があるに違いないと思い、お聞きすると「親父とおふくろが始めた店で、18歳の時に手伝ってくれないかと言われて始めたのよ」「24歳ぐらいから商店街や町会のお手伝いにもチカラを注いで、一生懸命やったね」「魚離れにつながるような厳しいときもあったけれど何とかやってきたね」「楽しいのよ」とサラッと話されます。

結婚後は奥さまも店に入り、お父さんが年齢を重ねて体力が落ちてくると、弟さん夫婦がともに働くようになったそうです。

今は、奥様と弟さん夫婦と4人で切盛りし、忙しい時間帯に、若手のお手伝いの方が入っています。

岩瀬清さん
魚米商店 岩瀬清さん

● 美味しい魚への
こだわりは?

「毎日市場に仕入れに行くことだね。ずっと、築地市場で仕入れしていたの。市場が豊洲に移ってからは、週に1回豊洲に行き、その他は千住の市場で仕入れている」と楽しそうに話されました。

一日のスタートは仕入れからとお聞きして朝、仕入れから帰ってきたところにお邪魔することにしました。

今日は、どんな魚が店に並ぶのかと、興味津々に出かけました。午前9時過ぎの店は、もう、シャッターが開けられ、弟さんが一人で開店準備を始めています。

間もなく、仕入れた魚を積んだ車が到着しました。早速、見せてもらうと、市場直送の魚はまさに新鮮そのもの!日頃見ることのない丸ごとの光る魚を見て、店が継続している理由のひとつはこれだ!と思いました。

弟さんと2人で荷下ろし作業が終わると、開店までに下準備をするそうです。切身や刺身用に切り分けたり、煮たり、焼いたりと、店頭に並べられるまで、まだまだ手が加わります。大好きなカワハギの刺身を想像しながら、楽しく仕入れの様子を拝見しました。

魚米商店の店頭

● 今日は何を
買いましたか?

お客さまに聞きました。

「晩酌のつまみに刺身と天ぷら。夕飯は、これで良いの、ほとんど毎日来ているよ」と話してくれたのは、ご近所に住んでいるという年配の男性です。時には、仲間が訪れて一緒にお酒を酌み交わすそうです。

「ここの刺身が好きで通っています。今日も刺身を買いました」と見せてくれたのは、綾瀬から自転車で来たという若いカップルです。

「ここの天ぷらが好きなの」と話した方は、足立区から、月に1度知合いの美容室に来た時に必ず買って帰るという女性客です。

バイクで堀切から時々来るという若い方は「天ぷら、煮物、生もの、焼き物、全部揃うから」とたくさん買っていました。

子どもを連れた常連客らしい男性に聞くと、「週に2、3回来るかな?今晩食べ切れなかったら、漬けにするから」とたくさんの刺身を両手に下げて帰りました。

お孫さんらしき男の子と一緒に刺身を選んでいた方は「今日、孫が高校入試の合格報告に来たから、お祝いです」と嬉しそうに話されました。周りから「おめでとう」の声と拍手!丁寧にお礼を言っているお孫さんは「ここの魚が大好きで、おばあちゃん家に来た時は、いつも楽しみに食べています」と話してくれました。

どのお客さまからも聞こえてきたのは、「美味しい・安い・新鮮」の声でした。

魚米商店の看板

取材を終えて

葛飾区内に64軒あった個人商店の魚屋さんは、今16軒になってしまったそうです。

他の店が閉店していく中で、続けていくことは決して容易なことではないと思います。「大変だけど楽しいから続けている」「家族が助けてくれるので何とかやっていける」と穏やかな笑顔で話しをされる岩瀬さんには、威勢の良い魚屋さんのイメージとは少し違って、つい人生相談をしたくなるようなやさしさを感じました。共に働く皆さんの声かけもやさしいのです。

買い物がなくても毎日のようにママ友と赤ちゃんを連れてココに来ると言っていた若い方がいました。魚の美味しさだけではない地域に根付いた魅力があるのですね。

「いらっしゃいませ」「美味しいよ」の声がずっとずっと聞こえ続けますように!食べて応援していきます。

魚米商店の店頭

本文は2024年3月31日「かつしか まちナビ」69号(文: 布施洋子)より転載。著作権は掲載誌に帰属します。